
封筒のように薄い財布。

totokoko×corneのコラボで制作したLファスナースリムウォレット「SOBRE(ソブレ)」。
商品制作に込めた思いと工夫は商品ページにほぼすべて網羅させていただきましたが、長い文章が続くとやっぱり読みにくいので、画像と並べながらあらためて、その使い勝手やこだわりポイントを解説させていただこうと筆を取りました。
現在の財布のトレンドは小さいか薄いか。
お店でも現在、ミニ財布の先駆者にして到達点でもあるエムピウの「ミッレフォッリエ」が大ブレイク中ですが、コロナ禍で一気にペイ系などのキャッシュレス決済が浸透して財布の形状はどんどん変わって来ています。
財布の好みは千差万別なので、もちろん従来からあるスタイルのものも引き続き人気はありますが、ここ数年で台頭してきたのは「ミニ財布」や「薄財布」と呼ばれる従来のお財布と比べると、財布に見えないような小さかったり薄かったりするものです。
そして、小さくかったり、薄かったりするのに色々内装に工夫が凝らされ、驚きの収納力を誇るものも多いです。
今回、totokoko×corneでは、「薄い」に力点を置いて、長財布として出来る限り小さく、そして中身を入れても「薄く」持てる、封筒のような軽やかな使い勝手のお財布を目指しました。
名前の「SOBRE」は、スペイン語で「封筒」の意味です。

どうですか?この薄さ。
厚みなんと僅か12mm、とかなり薄いお財布に仕上げました。
専用の木型を作ってもらい、ギリギリまでファスナーテープの幅を細く作っています。
開け閉めの感覚にもこだわりアリ。
財布は毎日開け閉めします。アール部分などで引っ掛かりが出ないように熟練の職人さんの感覚で細心の注意を払って縫製してもらっています。
縦横も出来るだけ小さく、かつ1万円が引っ掛からないようにギリギリになりすぎない絶妙のサイズに設定しました。
この部分だけで何度かサンプルを作り直していただいてます。totokokoの工藤さんを介して要望をお伝えするのですが、あまりにも僕がうるさいのでそのうち職人さんもイライラしてきたとのことでした汗

この薄さにこのファスナー。
ファスナーにはエレメント1つ1つを磨いたYKKの高級ファスナーエクセラを採用しました。個人的にはエクセラは摩擦が高く開閉が重く感じるので好みではないのですが、今回は薄さにコミットするためにエレメントサイズの小さい「3号」を使っているので動きもスムーズで、上品な色気と高級感、そして開閉のしやすさを両立出来ています。
ファスナー引手も何度もサンプルを作り、手に馴染む長さ、そしてさりげない色気を感じるデザインに仕上げています。スライダーと引っ張りの繋ぎには内径9mmの大きめの丸カンで繋いでおり、旅行時などにコードなどで丸カンと鞄と連結して紛失を防ぐ際にも役立ちます。
財布を開いた奥手側にマチを付けるか付けないかも、かなり悩みました。薄くスタイリッシュに作るなら、マチを付けずに作った方がスリムなのですが、そうするとどうしても開口部が狭くなりお札諸々、中身が少し出しにくくなってしまうんです……。
これもサンプルを双方のタイプで作り、検証して今回の広く開くスタイルをセレクトしました。
この違いをお客様に体験していただけないのは少し残念ですが製品版は、視認性、開き具合、中身の出し入れのしやすさ、かなり良い感じに仕上がっております。
そして肝心の使い勝手も「小銭」「お札」「カード」。それぞれに「SOBRE」だけの特徴を持たせました。

アールを付けたステッチが決め手の小銭入れ。
まず開けて左手に取り付けた小銭入れは、口に別にファスナーなどを取り付けていないので、メインファスナーを開けるとすぐアクセスできます。
もちろん、ファスナーを閉めた状態で勝手に小銭があっちこっちに行かないように、高さは綿密に調整しています。
ポケット内には緩やかにアールを描くようにステッチを掛けて、奥にコインが溜まらず、勝手に中央に小銭が集まり、手前に転がすと浅い部分に小銭が移動するので奥まで指を入れずに出し入れが出来ます。左手の親指で小銭入れを開きながら、右手で小銭を取り出すイメージです。

なめらかさが違う、お札入れ。
続いてお札入れは右側に設けており、こちらは内側もすべて贅沢に表革にを使うことですべすべ、摩擦が少なくスムーズに出し入れが出来るようにしています。
そして小銭入れとカード段の間にもお札を挟むことができ、更に小銭入れの底部を本体に縫い付けないことで小銭入れの裏側に隠しポケットのような収納を作りました。
計3つのお札収納で、「お札」「レシート」「領収書」「へそくり」など用途別に分けて収納することが出来ます。
お札3つの収納は自分が財布を使う上で絶対に譲りたくなかった箇所でもあります。

縦と横、使い分けて覚えやすいカードポケット。
そしてカードの収納ですが、こちらもお財布を薄く持てるようにデザインしました。お財布がブタ財布になる大きい原因が細かく分けられたカード段です。
整然と並んだカード段はカードの識別がしやすいのですが、それだけ革や生地を使うのでその分厚みが増します。
更にカードを少しずつずらして入れることでカードが斜めに重なり更に厚みが出やすくなります。
これを解消するためには、細かいカード段を設けず、1つのポケットのサイズにゆとりを持たせて複数枚を一緒に入れる仕様にすることがポイントです。
今回の「SOBRE」では横2つ、縦2つ。計4つのカードポケットにすることで、適度に住み分けが出来、かつカードを厚みのあるプラスチックカードで20枚程度入れてもほとんど厚みが出ないようにデザインしています。
自分なりにこのカードは「縦」このカードは「横」のようになんとなく仕分けすると、どこに入れたか記憶もしやすくなります。

全ての中身が一目瞭然。
「小銭」「お札」「カード」。この3つの要素の組み合わせに今回かなり悩みました。サンプルを何度も作っていただき、推敲と打ち合わせを繰り返して、最終的に満足いく使用感を実現することができました。
上の画像のように、お財布を色々な角度に回転させずに、一方向から全ての中身を確認出来るので小銭も無駄に貯まらずにスマートに使っていただけます。

使い込むことでどんどん馴染むイタリア革。
革は今回イタリア・サンクローチェ地区の「TENPESTI(テンペスティ)」社の「MAINE(マイネ)」を使いました。
牛ショルダー革を昔ながらの植物性タンニンでなめしたバケッタレザーで、マットで素朴な質感が特徴です。
使い込むほどに味わい深い色に変化し、自然な艶が出るエイジングを楽しむことが出来ます。
他のイタリアンレザーとの違いは、オイル感の少なさです。オイルが少ないことで、マットで素朴な革本来の風合いを楽しんでいただける革に仕上がっていますし、後からニートフットオイルなどで油分を足してお好みのオイル感にしてもらうことも可能な革となっています。
選び抜いた4色のカラー。
今回、経年変化後を重視して、「ネロ(ブラック)」以外はややパステル調のカラーをセレクトしています。
使いだしは少し可愛らしい雰囲気なのですが、使い込むことでゆっくりと深みが増してカッコよいイメージに変化します。
「フクシャ(ピンク)」はオレンジ味が増してサーモン系のカラーに育ちますし、「コバルト(ブルー)」も最初は赤味が少し入ったライトブルーなのですが、どんどん色味が深くなって美しくヨーロッパらしいブルーに変わります。
「チェネレ(ライトグレー)」はサンプルで一番長い時間使いました。上品で男女問わず手に取りやすいライトグレーが少しづつまろやかに変化して、水濡れなどで出来た模様も財布との美しい記憶に変わっていきます。
「ネロ」は他のカラーに比べると静かな経年変化になりますがマットな質感から光沢が増えていき色っぽくなっていきます。
いずれのカラーもポイントは長く使うことでゆっくり変化していくことです。
表面についた小傷を消しやすいのもこの革の特徴の1つで、表面に薄くついた傷は栄養クリームで磨いたり、水気をしっかりと絞った布で水拭きすることで消すことが出来ます。

是非、手に取って欲しいtotokoko×corneの自信作。
「財布」はここ数年のQR決済などの浸透などで、どんどん変化していく過渡期にあります。
もしかしたら数年後にはお札も小銭も全く持ち歩かず、全てスマートフォンだけで用が足りてしまう未来があるかも知れません。
今回制作した「SOBRE」は、2022年現時点で「最高に使いやすく」かつイタリア革の経年変化も存分に楽しめるお財布に仕上がったと思います。
ここに書いた以外にも細かいパーツや縫製にかなりこだわり、数えきれない変更や調整を繰り返した自信作です。
モノづくりのプロと、モノ売りのプロが1年間、考え抜いた究極の薄財布。
是非、実際に手に取ってその使いやすさを体験していただきたいです。