下町の小さな工場の大きな挑戦。

下町の小さな工場の大きな挑戦。

By 松田 卓也 投稿日: / 最終更新日:

※こちらは4月23日発行のメールマガジンからの加筆修正となります。

こんにちは。コルネ松田です。

今回ご紹介させていただく新ブランド「FUJIKINKO(フジキンコウ)」。

あらかじめお伝えしておきますが、はっきり言ってかなりニッチなアイテムです。

今この文章を読んでくださっている方の中にも私には関係ないわ~、という人もおられる、というよりそういう人のほうが多そうかな……とは正直、文章書きながらも思います。

でも、それでも皆様にお伝えしたいほど、個人的にプッシュしたいブランド。
それがこの「FUJIKINKO」なんです。
なので、お時間ある方は10分ほどお付き合いいただけると嬉しいです。

「FUJIKINKO」の母体である、富士産業は1969年(昭和44年)年創業の金属問屋。いわゆる町工場らしい大企業の下請けの仕事を中心に営んでいるそうです。
この文章を読んでくださっている皆様の中にも製造のお仕事されている方やそのご家族もおられるかも知れませんが、下請け中心の小さい工場だとOEM(相手先ブランドの形をとった生産)の仕事がメインとなるので、我が子のように大切に作った商品も、自社の名前もほとんど世には出ません。
自社発の画期的なアイディアを持った製品も元請けの大企業の名前でしか知られることはありません。でも、自分が心血を注いで作った製品は、出来れば自分たちの名前で世に出したい、というのが、こういった町工場の本音だと思います。

そういった「下請け企業から脱却したい」という、職人たちの夢を乗せて、2020年に立ち上がったブランドがこの「FUJIKINKO」です。

金属業界の中でも特に難しいとされる真鍮の加工。
日本でもここでしか出来ない技術で作られたキーリングなどのアクセサリーは武骨ですが本当に美しく、本物の魅力に溢れています。

曲げの技術や細部の面取りなど非常に美しくため息が出ます。

特にエイジングに関してはオリジナルの染めの技法を編み出しており、真鍮風メッキや塗装とは全く異なる硫化いぶしの技法で行っており、研究を重ねた末の唯一無比の雰囲気はほとんどの方にとって未知の領域だと思います。

日本で唯一の染色技術。

「FUJIKINKO」で現在ラインナップしているアイテムには加工無しの無垢のナチュラルブラスの他に、「VINTAGE」と「BLACK」があります。
上の画像でいうと左がナチュラルブラス、右上が「VINTAGE」右下が「BLACK」ですね。

「VINTAGE」は30年使い込んだ真鍮をイメージして染色しており、使っていくことで1年後には31年、2年後には32年と積算した年月の雰囲気を楽しんでいただけます。30年先取りできるので、本来ならば100年足らずの一生では味わえない様な先の未来を体験できるかも知れませんね。
いぶしというとシルバー素材をいぶして黒くなった部分と磨いた部分のコントラストで凹凸を際立たせる仕上げをご覧になったことのある方が多いと思いますが、真鍮は同様の方法でいぶすとシルバーのように均一に染めることがとても難しく、まだらに汚い感じに染まります。その部分を研究しつくして、均一に狙った色に仕上げることが出来るのは日本では「FUJIKINKO」を運営する富士産業だけの技術だそうです。

そして「BLACK」は炭黒(スミクロ)と呼ばれるマットなブラックに仕上げており、こちらは逆に角などのエッジ部分などがこすれることで、下地の無垢の真鍮が顔を出すというエイジングを意識しています。

個人的にはいわゆる「ヴィンテージ加工」と呼ばれるものに関して、それほど良い印象は持っていませんでした。

家具にしても、洋服にしても、焼き物にしても……本当に長い年月を経て積み上げられた本物だけが持つ「雰囲気」に、人工的に「作られた」ヴィンテージ加工は追いつけないと、基本的に僕は考えているからです。

最初に富士産業の社長さんとお話しした時も、正直そういう思いがあったので、もしかしたら失礼な発言もあったかもしれません。

でも、実際に加工された「VINTAGE」「BLACK」の仕上がりを見た後には、自分の見識の浅さに、あっさりと白旗を上げるしかありませんでした。

あまりにもリアル。

何十年と愛でられてきた蕩けるようなまろやかな真鍮の美しさを体現したアイテムは本当に美しく、「金」の煌めくような整った美しさとは違う、「真鍮」の武骨な美に魅力を感じる方には是非、手に取って見ていただきたいです。

ブランド名の「FUJIKINKO」は、先代社長のふるさと静岡県から見える富士山から取った「FUJI」と金属加工の「金工=KINKO」が組み合わせられています。

個人的には下町の町工場から生み出される、まだ見ぬ値千金のアイテムが埋もれている「金鉱」を重ねてみています。

1つ1つのアイテムが熟考を重ね、サンプルを何度も作ったうえ製品化し、かつ製品化後もブラッシュアップを続けています。

1点1点を熟練職人がハンドメイドで仕上げているため、まだまだアイテム数などは少ないですが、人と被らない、本気・本物に魅力を感じる方にはきっと届くブランドだと思いますし、武骨に着実に支持を得ていくと思います。

今回はブランドの黎明期から携われる機会を持てたことを個人的にも嬉しく思います。

パッケージにもこだわり。細部に宿る職人魂。

最後になりましたが、「FUJIKINKO」のアイテムが入ったボックスは工場で使っているネジ箱にロゴを押したものだそうです。
中には精密機器を発送する際に使うスポンジが敷き詰められ、アイテムが入ったエアーパッキンに貼っているラベルは工場出荷時に貼り付けるものをイメージしているそうです。

こういった細部に宿ったこだわりは、職人らしい生真面目さ、自分が作った製品に対する愛が伝わってきますね。

贈り物の際もきっとこのユニークさ、特にモノにこだわりのある方にこそ届くと思います。

こちらを読んでくださった皆様にもこの「FUJIKINKO」によるゴールドラッシュの始まりに是非立ち会っていただけたらと思います。

長文、最後までありがとうございました。

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